2024年度多層言語環境研究シンポジウム「多層言語社会のもやもや」プロシーディングス

目次

プログラムと発表要旨

フルペーパーの部 扉

トランスフォーマティブ・ツーリズムへの参加動機と内的変容―畏敬の念に着目して― 宮下 麻美

継承日本語話者散在地域に住む家庭のファミリー・ランゲージ・ポリシー 佐野 愛子,吉田 美穂

質的分析による英語学習エンゲージメントの変化要因の考察 三ツ木 真実

北海道の地方におけるグローバリゼーションと言語―地域言語エコロジーに焦点を当てて― 中津川 雅宣

散在地域における文化的言語的に多様な子どもへのマジョリティ言語保障の指導体制に関する一考察 吉田 美穂,佐野 愛子

奥付

科研成果報告書

科学研究費補助金 基盤(B)「多層言語環境における第二言語話者像―トランスランゲージング志向の会話方略―」(課題番号:19H01276)の研究成果報告書ができましたので、ご報告します。

表紙

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まえがき・目次・概要・研究の進展

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科研成果報告(論文):佐野・飯田・大友(正誤表)

2_KAKENHIPROJECT_19H01276_Sano_Iida_Otomo

正誤表

科研成果報告(論文):酒井・河合, 山田, 小林

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科研成果報告(論文):三ツ木・杉江

4_KAKENHIPROJECT_19H01276_Mitsugi_Sugie

国際会議等・あとがき・業績・奥付

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11月4‣5日多層言語環境研究シンポジウムパネル・ディスカッションの要旨

2023年度多層言語環境研究シンポジウムにおける、パネル・ディスカッションの要旨です。発表者が複数になりますので、個人発表の要旨とは別に提示します。

題目:『グループワーク×英語授業―やる気が伝染する学習活動のデザイン』

コーディネーター:廣森友人(明治大学)

パネリスト:
三ツ木真実(小樽商科大学)
吉村征洋(龍谷大学)
桐村亮(立命館大学)
田中美津子(大阪公立大学)

趣旨説明 (廣森友人)

近年の英語授業では一貫してコミュニケーション活動の充実が目指され,タスクを用いた指導や,生徒が主体となり互いに学び合う協同学習などが取り入れられている。結果として,授業にはこれまで以上にペアやグループでの活動が増えている。この傾向は言語習得の観点から見れば望ましいものだが,一方でコミュニケーション中心の授業に対して否定的な感情や不安を持つ生徒がいることも事実である。だとすれば,「うまくいかないペア/グループにはどのような問題が生じているのか」,「高い成果を上げるペア/グループにはどのような特徴があるのか」,「ペア/グループ活動をいかに実り多いものにするのか」といったことを理論と実践の両面から検討することは,より効果的な指導実践に寄与すると同時に,動機づけ研究のさらなる発展・深化にもつながるものと考えられる。本パネルディスカッションでは,学習者が相互にやる気を高め合いつつ,グループワークに主体的に取り組むために必要な学習活動のデザインについて,リーダーシップ,協同学習、グループ分け,自己・集団効力感といったキーワードを通じて議論を行う。

注: なお,本パネルディスカッションにおける各研究は,JSPS科研費(B) [20H01290]の助成を受けたものである。

パネル1 (三ツ木真実)

より良いグループワークを生み出すリーダーシップの検討:創発リーダーと指名リーダーの比較に基づく考察

本発表では,どのようなリーダーの存在が英語によるグループワークの活性化や活動へのやる気を高めることにつながるかという観点から,2つの異なるリーダーシップのスタイルに焦点を当てて比較・検討を行う。比較するリーダーシップの種類は,リーダーが自然発生する創発リーダー(Emergent Leader: EL)と,教師から事前にリーダーの役割を与えられた指名リーダー(Assigned Leader: AL)の2つである。それぞれのリーダーがいるグループにライティング課題に取り組んでもらい,活動中の発言や振る舞い,質問紙,ライティングの点数をデータとして収集・分析し,グループワークのダイナミクス,動機づけ,ライティングの質の3つの側面から評価して分析を行った。その結果,グループワークの活性化に貢献する行動はALのいるグループでより頻繁に観察された。また,動機づけはELのいるグループでは徐々に上昇したが,ALがいるグループでは早期にピークに達し,高い水準を維持した。この結果から,明確な役割を持つリーダーを事前に指名して配置することで,グループワークの活性化と動機づけの早期の高まりを促進できる可能性が示唆された。

パネル2 (吉村征洋)

協同学習によるグループワークが学習者のエンゲージメントに与える影響について

本発表では,協同学習理論に基づいたグループワークが学習者のエンゲージメントに与える影響について検証する。Johnson and Johnson(2018)によれば,協同学習を効果的に進めるためには,単に学習者をグループで学習させるだけでなく,「積極的相互依存」,「個々の責任」,「促進的相互作用」,「社会的スキル」,「グループの改善手続き」という5つの基本的構成要素を取り入れたグループワークの実施が重要である。協同学習理論を取り入れたグループワークは,言語面・認知面・情意面において,学習者に良い影響を及ぼすことが報告されている(Dörnyei & Murphey, 2003; McCafferty et al., 2006; Yoshimura et al., 2021)が,学習者のエンゲージメントに与える影響については,これまであまり検証されていない。本発表では,情意面(アンケート調査),認知面(Language-Related Episodes),行動面(グループワークにおける発話数・ターン数)において,協同学習によるグループワークが学習者のエンゲージメントに及ぼす影響について考察する。

パネル3 (桐村亮)

グループワークにおけるグループ分けの影響

グループワーク実施の際,メンバーをどのように決めるかは,必ず行う選択の一つである。本発表では,一学期間のリーディング授業でのグループワークを例として,メンバーをずっと固定するか,毎回変えるかによって,学習意欲や成果にどのような影響があるかについて議論する。大学1回生の英語リーディング科目において,メンバー固定クラスと組み替えクラスに分け,毎週一本の英文記事について,「事前に各自で予習」「授業中にグループで内容確認」「最後に内容理解テスト受験」のタスクを10週間にわたって行った。期間中3回の質問紙調査でモチベーション等の変化を測定するとともに,予習にかけた時間とテスト結果を分析対象に含め,両クラスを比較した。結果からは,毎回新鮮な顔ぶれでグループワークに取り組むことと,慣れた仲間と取り組むことは,それぞれ長所と短所があり,タスクの期間や目的に合わせて,グループの組み方を調整する重要性が示唆された。

パネル4 (田中美津子)

グループワーク環境と動機づけ,自己・集団効力感

グループワーク環境が学習者の動機づけに影響を及ぼすことは報告されているが,自己効力感や集団効力感にどの程度影響を及ぼすのかについてはあまり検証されてはいない。そこで,本発表では,グループワーク環境と,動機づけ,自己効力感,集団効力感の関係を検証する。英語の授業で同じメンバーと一学期間グループワークに取り組んだ大学生を対象に質問紙調査を行った。パス解析の結果,グループワーク環境は学習者の動機づけ,自己効力感,集団効力感に差をもたらすことが明らかになった。具体的には,グループの結束が強く,メンバーのエンゲージメントが高いグループの学習者ほど,強く動機づけられ,自己効力感や集団効力感も高い傾向が見られたが,グループの結束が弱く,メンバーのエンゲージメントが低いグループの学習者には,逆の傾向が見られた。結論として,グループワーク環境は動機づけのみならず,自分はできる,集団でできるという自信,有能感を育む上でも重要であることが示唆された。

2023年度多層言語環境研究シンポジウム

2023年11月4・5日に、北海道大学クラーク会館で多層言語環境研究シンポジウムを開催します。
発表時間は研究発表・実践報告が20分(質疑応答5分)、パネル・ディスカッション/ワークショップなどは総時間60分~90分(応相談)を予定しています。

発表予定者は、10月6日までに発表要旨を次のコメント欄にご記入ください。400字~800字とさせていただきます。(ご面倒ですが、コメントが並んだ一番下までスクロールしてください。コメント記入欄が出てきます。なお、ウェブサイト管理者の承認後に公開になりますので、すぐに確認できません。しばらくして公開になっていないようでしたら、ykawai@imc.hokudai.ac.jpまでお問い合わせください。)

多層言語環境研究科研―研究打合せ会

新型コロナ肺炎感染拡大による行動制限も緩和されましたので、2023年度の対面による第1回の多層言語環境研究科研グループ打ち合わせ会を以下の要領で行います。

日時:2023年7月22日(土)13:20~16:40 (集合時間:13:00-(20分会場準備、 終了後20分後片付け、解散17:00)

場所:旧永山邸(札幌市旧永山武四郎邸及び札幌市旧三菱鉱業寮)和室A https://sapporoshi-nagayamatei.jp/(〒060-0032 北海道札幌市中央区北2条東6丁目、電話:011-232-0450)

各自15分ほど、研究成果報告書ならびに11月4・5日の研究成果報告会での発表論文についてプレゼンテーションを用意してきてください。

第1部:13:20~14:20 口頭報告3名(15分発表+5分質疑×3人)

第2部:14:30~15:30 口頭報告3名(15分発表+5分質疑×3人)

第3部:15:40~16:40 非対面報告(パワーポイント提示×2人)と代表者による全体報告

注:会場に入場者用の駐車場は用意されていません。車で来場するときは、近隣の有料駐車場をご利用ください。

主催・連絡先:北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院・河合靖(ykawai@imc.hokudai.ac.jp、科学研究費補助金 基盤研究(B) 一般「多層言語環境における第二言語話者像―トランスランゲージング志向の会話方略」(課題番号:19H01276,2019年度~2023年度・研究代表者)

2022年度国際学術大会「地域文化の理解と日本学研究ネットワーク形成」

2022年度国際学術大会
「地域文化の理解と日本学研究ネットワーク形成」
─地域文化と多層言語環境研究─
◯ 主催
・北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院
・基盤研究(B)「多層言語環境における第二言語話者像―トランスランゲージング志向の会話方略」
・漢陽大学大学院日本言語文化学科BK21FOUR「地域文化の創出と人文活動方法論を構築するための日本学教育研究チーム」
◯ 協力
・国際交流基金
◯ 日付
・2023年1月27日(27日~29日の3日間のイベントの1日目として実施)
◯ 会場
・北海道大学 遠友学舎(談話ラウンジ、ZOOMハイブリッド)[予定・申請中]

===プログラム===
<開会式> 9:30~10:00 司会:パイチャゼ・スヴェトラナ (北海道大学)
開会の挨拶 鄭 夏美
漢陽大学大学院日本言語文化学科「地域文化の創出と人文活動方法論を構築するための日本学教育研究チーム」 チーム長
歓迎の挨拶 河合 靖
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院 院長

<第1セッション >10:00~12:00 司会:金志英 (漢陽大学)
10:00~10:20 李昇熹(漢陽大学) 日本の経済安保における中国
10:20~10:40 金ジソク(北海道大学) 時事・教養としての「倭色」─朴正熙政府時代の新聞記事を中心に
10:40~11:00 ソンバウナ(漢陽大学) 尹錫悦政権の対日本外交政策の転換と見込み:元徴用工訴訟問題を中心に
11:00~11:40 ディスカッション コメンテーター:佐藤太久磨 (漢陽大学)

写真撮影・昼食 11:40~13:00

<第2セッション>13:00~14:30 司会:佐藤太久磨 (漢陽大学)
13:00~13:20 朴姫慶(漢陽⼤学) ユネスコ⽂化遺産の「卓越した普遍的価値」の解釈の違いから⾒た韓⽇関係
13:20~13:40 權永慶(北海道大学) 日韓ウェブ漫画利用者の満足度が購買意図に及ぼす影響
13:40~14:00 金美羅(漢陽大学) 日本で神になった朝鮮の女性‘おたあジュリア’
14:00~14:30 ディスカッション コメンテーター:天田顕徳(北海道大学)

休憩 14:30~14:40

<第3セッション>14:40~16:30 司会:黃愛玲 (国立高雄科技大学)
14:40~15:00 サヴィヌィフ・アンナ (北海道大学) CLILの観点から考える教科書の課題文〜ロシア語、 日本語、英語での「理科」を事例に
15:00~15:20 朴主言(漢陽大学) 韓国語学習者のジャンル認識類型が読みの学習に及ぼす影響
15:20~15:40 譚翠玲(北海道大学) 教師主導型学習と自己主導型学習における集団メタ認知の違い
15:40~16:00 片岡恋惟(北海道大学) 大学教員初任者の授業活動におけるストレス過程の変容─複線径路・等至性アプローチ(TEA)と教師理論による検討─
16:00~16:30 ディスカッション コメンテーター:葛西洋三 (静宜大学)

休憩 16:30~16:40

<第4セッション>16:40~18:00 司会:朴墉一 (漢陽大学)
16:40~17:00 傅媛媛(北海道大学) 在日留学生の学習動機の変化―教室外活動の参加効果を中心として―
17:00~17:20 李ギョンヒ(漢陽大学) 「食べる」と「먹다」の韓日の言語表現の対照についての考察
17:20~17:40 新海茜(北海道大学) 日本における英語教育政策―日本語教育政策間の構造的不 均衡に関する批判的考察:観光現場からの視座を取り入れながら
17:40~18:00 ディスカッション コメンテーター: 河合 靖 (北海道大学)

閉場・懇親会 18:30

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